循環器・ECG ビジュアル学習

循環器の構造・血行動態・疾患と、12誘導ECG・波形を日本語で復習する個人学習用ツールです。

心臓のしくみを「血液の通り道・弁・送り出す量・電気の流れ」の4つで確認します。NHLBI・StatPearls・AHA/ACC などの公開資料をもとにした自習用まとめです(出典は「循環器疾患」タブの最後)。図は理解のために単純化しています。

① 血液の通り道 — Pulmonary & Systemic Circulation(肺循環・体循環)

心臓は左右2つのポンプが並んだ臓器です。右側は全身から戻った酸素の少ない血液を肺へ、左側は肺で酸素を受け取った血液を全身へ送ります。

全身
酸素の少ない血液が戻る
→
右心房→右心室
RA → RV
→
肺
CO₂を出し O₂を受け取る
→
左心房→左心室
LA → LV
→
大動脈→全身
Aorta
心臓の中の血液の流れ(アニメーション)

青=全身から戻る血液(静脈血)、ピンク=肺から戻った血液(動脈血)。白いひらひらが弁です。

上大静脈SVC下大静脈IVC右肺へ(肺動脈)to right lung右肺から(肺静脈)from right lung右心房Right atrium三尖弁Tricuspid valve右心室Right ventricle大動脈Aorta左肺へ(肺動脈)to left lung左肺から(肺静脈)from left lung左心房Left atrium僧帽弁Mitral valve大動脈弁Aortic valve肺動脈弁Pulmonary valve左心室Left ventricle心室中隔Septum図:Wapcaplet, Reytan, Sjef(CC BY-SA 3.0)を改変・出典はページ下部
拡張期 Diastole
収縮期 Systole
▲ I音(房室弁が閉じる)II音(半月弁が閉じる)▲
拡張期 Diastole心室がゆるむ:半月弁(肺動脈弁・大動脈弁)が閉じ、房室弁(三尖弁・僧帽弁)が開いて心房から心室へ血液が流れ込む
収縮期 Systole心室が縮む:房室弁が閉じ(I音)、半月弁が開いて肺動脈・大動脈へ血液が送り出される。終わりに半月弁が閉じる(II音)
順番を1ステップずつ追う
  1. 上大静脈・下大静脈から右心房へ戻る
  2. 三尖弁を通って右心室へ入る
  3. 肺動脈弁を通り、肺動脈から肺へ向かう
  4. 肺の毛細血管で CO₂ を手放し、O₂ を受け取る
  5. 肺静脈から左心房へ入り、僧帽弁を通って左心室へ
  6. 大動脈弁を通り、大動脈から全身へ送られる
動脈・静脈の名前はどう決まる?

中の血液の酸素の多さではなく流れの向きで決まります。心臓から出ていく血管が動脈、心臓へ戻る血管が静脈です。そのため肺動脈は酸素の少ない血液を、肺静脈は酸素の多い血液を運びます。

② 4つの弁 — Heart Valves(心臓弁)

三尖弁 Tricuspid肺動脈弁 Pulmonary僧帽弁 Mitral大動脈弁 Aortic

弁は前後の部屋の圧の差で開いたり閉じたりし、血液を一方向にだけ流します。心房と心室の間が房室弁(三尖弁・僧帽弁)、心室の出口が半月弁(肺動脈弁・大動脈弁)です。

いつ、どの弁が開く?

収縮期(心室が縮む):半月弁が開き、房室弁は閉じる
拡張期(心室が広がる):房室弁が開いて心室に血液が入り、半月弁は閉じる

心音との関係

Ⅰ音:房室弁が閉じる音(収縮期の始まり)
Ⅱ音:半月弁が閉じる音(拡張期の始まり)

③ 心拍出量 — Cardiac Output(CO)

CO = HR × SV:心臓が1分間に送り出す血液の量。安静時の成人ではおよそ 5〜6 L/分です。

CO = 4.90 L/分

スライダーを動かして計算してみてください。実際の値は体格や活動量で大きく変わります。

SV を決める3つの要素

前負荷:収縮の直前に心室がどれだけ満たされ、引き伸ばされているか
収縮力:心筋が縮む力の強さ
後負荷:血液を押し出すときにかかる抵抗
ほかの条件が同じなら、前負荷・収縮力が増えると SV は増え、後負荷が増えると SV は減ります。ただし前負荷で SV が増えるのは生理的な範囲までです。心不全などで心臓のポンプ機能が落ちていると、前負荷が増えても SV が十分に増えず、うっ血(肺や体に水がたまる)が強まることがあります。

フランク・スターリングの法則

拡張期に心室へ多くの血液が入って心筋が伸びるほど、次の収縮が強くなるという性質です(一定の範囲まで)。

脈が速すぎると CO はどうなる?

拡張期が短くなって心室が十分に満たされず、SV が減ります。そのため HR が上がっても CO が増えない、むしろ減ることがあります。

④ 電気の流れ — Cardiac Conduction System(刺激伝導系)

洞結節
SA node
→
心房
Atria
→
房室結節
AV node
→
ヒス束
His bundle
→
脚・プルキンエ線維
Bundle branches / Purkinje

洞結節が自分でリズムをつくり(ペースメーカー)、興奮は心房 → 房室結節 → 心室へと伝わります。房室結節で少し遅れるのは、心房から心室への血液の送り込みが終わってから心室を縮めるためです。

ECG では P 波=心房の興奮、PR 間隔=房室結節を通る時間を含む、QRS=心室の興奮、T 波=心室の回復(再分極)に対応します。

途中で伝わらなくなると?

房室結節やヒス束で伝わりにくくなると房室ブロック、左右の脚で途切れると脚ブロックになります。ECG タブのアニメーションで実際の流れを確認できます。

代表的な循環器疾患を「何が起きる → 体はどうなる → どう見つける」の順に整理しました。公開ガイドラインや StatPearls をもとにした自習用まとめで、個別の診断・治療の判断には使えません。

① 心不全 — Heart Failure(HF)

心臓が体に必要な血液を十分に送り出せない、または送り出すために高い圧が必要になった状態です。1つの病名ではなく、さまざまな心臓病の行き着く状態を指します。

左室駆出率(LVEF)による分類

  1. HFrEF(駆出率が低下):LVEF 40% 以下
  2. HFmrEF(軽度低下):LVEF 41〜49%
  3. HFpEF(保たれている):LVEF 50% 以上
  4. HFimpEF(改善):以前は 40% 以下だったが、その後の測定で 40% を超えた(2022 AHA/ACC/HFSA ガイドラインの定義。2021 年の心不全の国際的な統一定義では、さらに「元の値から 10 ポイント以上の改善」も条件にしている)
左心不全と右心不全の症状

左心不全:血液が肺にたまる → 息切れ、横になると苦しい(起座呼吸)、肺のラ音
右心不全:血液が全身の静脈にたまる → 足のむくみ、頸静脈の怒張、肝臓の腫れ

ステージ A〜D(進み方)

A:リスクがある(高血圧・糖尿病など)
B:心臓の構造に異常があるが症状はない(pre-HF)
C:症状がある、またはあった
D:治療を尽くしても症状が強い進行期

HFrEF の基本の薬(4本柱)

① ARNI・ACE 阻害薬・ARB のいずれか ② β 遮断薬 ③ MRA(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬) ④ SGLT2 阻害薬

② 冠動脈疾患・急性冠症候群 — CAD / ACS

冠動脈の動脈硬化で心筋への血流が足りなくなるのが冠動脈疾患(CAD)。冠動脈内の血栓などによって血流が急に減ったり止まったりし、急激に心筋虚血が生じるのが急性冠症候群(ACS)です。血栓は、プラークの破裂やびらん(表面がはがれること)などをきっかけにできます。

全体の関係(起こり方 × 心筋が壊れたか)

冠動脈疾患(CAD)冠動脈の動脈硬化による病気の総称
慢性(ゆっくり)
安定狭心症プラークで狭いが安定。運動などで負担が増えたときだけ痛み、休むと治まる壊死なし
急性(急に)= 急性冠症候群(ACS)冠動脈内の血栓などで、急激に心筋虚血が生じる
不安定狭心症新しく出た・増えてきた・安静時にも起こる胸痛壊死なし急性の心筋傷害なし
NSTEMI非 ST 上昇型心筋梗塞壊死ありトロポニン 上昇・下降STEMI 基準の ST 上昇なし
STEMIST 上昇型心筋梗塞(冠動脈の急な閉塞によることが多い)壊死ありトロポニン 上昇・下降持続する ST 上昇
狭心症=一時的な血流不足(心筋は壊れていない) 心筋梗塞=血流が途絶えて心筋が壊死

ACS は「冠動脈内の血栓などによって急激に心筋虚血が生じている」緊急事態をまとめた呼び名です。狭心症のうち ACS に入るのは不安定狭心症だけで、心筋梗塞(NSTEMI・STEMI)はどちらも ACS に入ります。

ACS の3タイプ(症状・心電図・トロポニンを合わせて判断)

  1. STEMI:持続する ST 上昇など、STEMI の心電図の基準を満たす心筋梗塞。冠動脈が急に詰まって起こることが多く、できるだけ早く血流を再開させる治療(再灌流)が重要
  2. NSTEMI:STEMI の基準を満たす ST 上昇はないが、トロポニンの上昇・下降(急性の心筋傷害)と、胸痛や心電図変化など心筋虚血を示す所見から診断する心筋梗塞。心電図は ST 低下や T 波の変化を示すことも、ほぼ正常のこともある
  3. 不安定狭心症:急性の心筋虚血が疑われるが、心筋梗塞を示す急性の心筋傷害(トロポニンの上昇・下降)が認められない状態
トロポニンの注意点

発症から数時間はまだ上がらないことがあるため、時間をおいて繰り返し測ります。心電図が正常でも ACS は否定できません。

最初の対応で押さえること

酸素:SpO₂ が 90% 未満など低酸素のときに使う(全員にルーチンでは使わない)
アスピリン:禁忌がなければ早期に
ニトログリセリン:低血圧・PDE5 阻害薬の使用・右室梗塞の疑いでは注意

③ 心筋症 — Cardiomyopathy

心筋そのものの病気です。心室の「形」と「動き方」の違いで分けます。

拡張型(DCM):心室が大きく、壁が薄くなり、縮む力が落ちる

肥大型(HCM):心筋が厚くなる。遺伝性が多く、厚い部分が左心室の出口をふさぐことがある

拘束型(RCM):心室が硬くなって広がりにくく、拡張期に血液が入りにくい(拡張障害が主な特徴)。心室の大きさはほぼ正常で、壁の厚さは原因によって異なる(アミロイドーシスなどでは厚くなる)

4つを並べて比べる(左心室の動き)
正常Normal
  • 部屋の大きさ・壁の厚さともに標準
  • 縮む力・広がる力ともに正常
拡張型心筋症DCM
  • 左心室が大きく、壁が薄い
  • 縮む力が弱い(収縮不全)→ 心不全になりやすい
  • 右心室も拡大・収縮低下することがある(図は右心室が保たれた例)
肥大型心筋症HCM
  • 壁(特に心室中隔)が厚く、部屋が狭い
  • 広がりにくい(拡張障害)。中隔が出口(流出路)を狭めることもある
拘束型心筋症RCM
  • 心室の大きさはほぼ正常だが、壁が硬い(斜線)
  • 広がりにくい(拡張障害)→ 血液が心房にたまり、心房が大きくなる
ピンクの部屋(左心室)が縮む大きさを見比べてください。図:Wapcaplet, Reytan, Sjef(CC BY-SA 3.0)を改変・出典はページ下部
縮めない病気と、広がれない病気

DCM は「縮めない」(収縮障害)、HCM と RCM は「広がれない」(拡張障害)が中心です。どれも心不全や不整脈の原因になります。

もう1つの型:不整脈原性右室心筋症(ARVC)

右心室の心筋が脂肪や線維に置き換わり、不整脈や心停止の原因になります。10代〜若い成人に多いとされます。

④ 弁膜症 — Valvular Heart Disease

弁の異常は狭窄(十分に開かない)と逆流(きちんと閉じない)の2つに分けて考えます。

狭窄 Stenosis:出口が狭くなり、手前の部屋が強い圧で押し出し続ける(圧の負担)

逆流 Regurgitation:送り出した血液が戻ってきて、部屋に余分な量がたまる(容量の負担)

逆流狭い図:Wapcaplet, Reytan, Sjef(CC BY-SA 3.0)を改変・出典はページ下部
拡張期
収縮期
心雑音が聞こえるタイミング

収縮期:大動脈弁狭窄、僧帽弁逆流
拡張期:大動脈弁逆流、僧帽弁狭窄
収縮期に開くはずの弁が狭い・閉じるはずの弁が漏れる、と考えると整理しやすくなります。

治療の考え方

主に症状の有無と、心室の機能が落ちてきたかどうかで治療の時期を決めます。大動脈弁狭窄では外科的な弁置換(SAVR)とカテーテル治療(TAVI)があり、患者と医療者で相談して選びます。

⑤ 血管の病気 — Vascular Disease

末梢動脈疾患(PAD):主に脚の動脈の動脈硬化。歩くとふくらはぎが痛み、休むと治まる(間欠性跛行)。足首と腕の血圧の比(ABI)で調べる。

腹部大動脈瘤(AAA):腹部の大動脈が広がってこぶになる。多くは無症状で、破裂すると命に関わる。治療を考える目安は径 5.5 cm 以上(女性は 5.0 cm 以上)。

深部静脈血栓症(DVT):主に脚の深い静脈にできる血栓。片脚の腫れ・痛み。原因は「血流のよどみ・血管の傷・固まりやすさ」(ウィルヒョウの3徴)。

肺塞栓症(PE):DVT の血栓が流れて肺動脈に詰まる、最も重い合併症。

DVT の調べ方と治療

Wells スコアで可能性を見積もり、D ダイマーと脚の静脈の圧迫エコーで確認します。治療の中心は抗凝固薬です。

⑥ 心筋炎・心膜炎 — Myocarditis / Pericarditis

心筋炎:心筋の炎症。ウイルス感染のあとに多く、胸痛・息切れ・動悸で始まり、心不全や不整脈を起こすこともある。トロポニン上昇、心臓 MRI が診断の手がかり。

急性心膜炎:心臓を包む膜の炎症。①特徴的な胸痛(前かがみで楽、深呼吸で悪化)②心膜摩擦音 ③広い範囲の ST 上昇・PR 低下 ④心膜液、のうち2つ以上で診断する。

心タンポナーデ

心膜液が急にたまると心臓が広がれなくなり、血圧低下・頸静脈の怒張・心音が遠くなる(ベックの3徴)。心膜穿刺で液を抜きます。

心筋炎のあとの運動

急性期は運動を控えます。競技スポーツは少なくとも 3〜6 か月は避け、評価を受けてから復帰します。

参考にした公開資料

このタブと「循環器の基礎」タブの文章・クイズは、以下の公開資料を確認して独自にまとめたものです。最新の情報や詳しい内容は各資料で確認してください。

誘導の基本(まずここから)

誘導(Lead)とは、電極で測った電位を組み合わせて、心臓の電気活動を特定の方向から観察する方法です。電極間の電位差から、それぞれの誘導の心電図波形を作ります。+側は「カメラを置く位置」、-側は比べるための基準です。心臓の電気が+側に向かってくると、波形は上向きになります。

四肢誘導の6つの向き

-+I右手(-)→ 左手(+)-+II右手(-)→ 左足(+)-+III左手(-)→ 左足(+)--+aVR左手と左足の平均 → 右手(+)--+aVL右手と左足の平均 → 左手(+)--+aVF右手と左手の平均 → 左足(+)
  • I・II・III:2つの手足の電極どうしの差を見ます。
  • aVR・aVL・aVF:1つの電極と、残り2つの平均(○)との差を見ます。波形が小さくなるので大きくして記録します(augmented=増強)。
  • V1〜V6:胸の電極と、3つの手足の電極の平均(中心電極)との差を見ます。そのため胸には1誘導につき1つ貼るだけで済みます。

12誘導が心臓を見る方向

I 0°II 60°III 120°aVF 90°aVL -30°aVR -150°V1V2V3V4V5V6

患者と向かい合った向き(患者の左が図の右)。青=四肢誘導(前額面)、赤=胸部誘導(水平面。楕円の下側が体の前)。四肢誘導の6つは、心臓の電気活動を前額面(体を正面から見た面)の異なる方向から観察します。各誘導には固有の角度があり、心臓の電気の向きによって波形の向きや大きさが変わります。胸部誘導の6つは体を輪切りにした面で、右前(V1)から左横(V6)まで心臓を囲むように見ます。

① 四肢誘導の電極はどこに貼る?(アイントーベンの三角形)
学習用に色を付けています。実際の電極色は規格やメーカーで異なるため、ここでは 位置関係を覚えるための補助として使ってください。
IIIIIIRALALLRL右手(右腕)左手(左腕)右足(基準・アース)左足
アイントーベンの三角形:Lead I・II・III は、右手(RA)・左手(LA)・左足(LL)の3点でできる三角形の3辺です。心臓はこの三角形の中心あたりにあるとイメージします。右足(RL)は三角形に含まれず、雑音を減らすための電極です。
四肢電極の色について
日本の心電計の多くは IEC の色です。色は付け間違いを防ぐための目印で、診断上の意味はありません。
RA = Right Arm(右腕相当)
LA = Left Arm(左腕相当)
LL = Left Leg(左脚相当)
RL = Right Leg(右脚相当・基準/アース)
IEC:右手 赤 / 左手 黄 / 左足 緑 / 右足 黒(右手から時計回りに「あ・き・み・くろ」)
AHA:右手 白 / 左手 黒 / 左足 赤 / 右足 緑
根拠・参考文献
② 胸部誘導(V1〜V6):貼る位置と見る部位
胸部誘導は、肋間・胸骨縁・鎖骨中線・前腋窩線・中腋窩線を目安に貼ります。
第1肋骨第2肋骨第3肋骨第4肋骨第5肋骨第6肋骨第7肋骨第8肋骨第9肋骨第10肋骨鎖骨中線前腋窩線中腋窩線胸骨V1V2V3V4V5V6

第4肋間=第4肋骨のすぐ下のすき間。V1・V2 は胸骨のすぐ右・左の第4肋間、V4 は鎖骨中線上の第5肋間です。V5・V6 は V4 と同じ高さで、正面から見ると重なって見えます(V6 は体の横、中腋窩線上)。
図:Mikael Häggström「Precordial leads in ECG.svg」(Wikimedia Commons、CC0)を改変

誘導貼る位置主に見る部位
V1右胸骨縁 第4肋間中隔
V2左胸骨縁 第4肋間中隔
V3V2 と V4 の中間前壁
V4左鎖骨中線 第5肋間前壁
V5左前腋窩線(V4 と同じ高さ)側壁
V6左中腋窩線(V4 と同じ高さ)側壁
四肢誘導が見る部位も合わせて:
下壁:II・III・aVF(下から見る)
側壁:I・aVL(左横から見る)・V5・V6
前壁〜中隔:V1〜V4
胸部誘導の色について
日本の心電計の多くは IEC の色です。色は位置を覚える補助で、診断上の意味はありません。四肢電極の表示と連動して切り替わります。
AHA例:V1赤 / V2黄 / V3緑 / V4青 / V5橙 / V6紫
IEC例:C1赤 / C2黄 / C3緑 / C4茶 / C5黒 / C6紫(V1〜V6 から「せ・き・ぐ・ち・く・ん」)
根拠・参考文献
波形の読み方(P・QRS・T)

1回の心拍で描かれる波形には名前があり、それぞれ心臓のどこで何が起きているかに対応しています。

P 波PR 部分QRSST 部分T 波U 波PR 間隔QT 間隔

図は II 誘導のような典型的な形です。PR・QRS・QT の長さはどの誘導でも同じ心臓の出来事なので共通ですが、波の形・向き・高さは誘導によって変わります(例:aVR では P 波も T 波も下向きが正常)。

部分心臓で起きていること時間(どの誘導でも共通)形(II 誘導の例)
P 波心房の興奮(心房が縮む合図)—小さくなだらかな上向きの山
PR 間隔心房の興奮が始まってから、房室結節を通って心室に届くまで0.12〜0.20 秒—
QRS心室の興奮(心室が縮む合図)幅 0.12 秒未満鋭く大きい、上向き中心の波
ST 部分心室全体が興奮し終わった時間—ふだんは平ら(心筋虚血で上昇・低下することがある)
T 波心室の回復(再分極)—上向きの山(QRS と同じ向き)
QT 間隔心室の興奮から回復まで心拍数で変わるので、補正した値(QTc)で見る—
U 波T 波のあとの小さな波—見えないことも多い
主な不整脈・伝導障害・STEMIの基本理解
「正常と比べて、どこがどう異常なのか」を短く整理します。まず病名と異常部位の関係をつかむことが目的です。
本教材のECG波形・アニメーションは学習用の模式図です。実際の診断・治療の判断には、患者の症状・脈拍・血圧などを含めた総合的な評価が必要です。
+ 電気の流れを詳しく見る
心臓の電気の流れを見る
信号が心臓のどこを通っているかと、そのとき心電図のどの部分が描かれているかを同時に表示します。光が進む位置とECGのカーソルが連動しています。心筋の壁は、興奮するとオレンジ色に変わります。STEMIは「前から見た心臓の表面」と冠動脈の図に切り替わります。
基準
心房・上室性
房室ブロック
心室性
脚ブロック
STEMI
右心房RA左心房LA右心室RV左心室LV 洞結節SA node房室結節AV nodeバッハマン束Bachmann's bundle右脚Right bundle branchヒス束His bundle左脚Left bundle branchプルキンエ線維Purkinje fibers 心房と心室の間は絶縁。通れるのは房室結節(AV node)だけ 図:Wapcaplet, Reytan, Sjef(CC BY-SA 3.0)を改変・出典はページ下部 ゆっくり通過 (slow)補充調律 (escape)瘢痕 (scar)リエントリー回路 (reentry)
Lead II ST上昇 鏡像のST低下
心房・上室性

AF — Atrial Fibrillation(心房細動)

正常:洞結節から規則的に心房が興奮。
異常:心房内で多数の不規則な電気活動が起こり、心房がまとまって収縮できません。P波ははっきりせず、R-R間隔が不規則になります。

Atrial Flutter(心房粗動)

正常:心房は1回ずつ整然と興奮。
異常:心房内を電気が規則的に回るリエントリーが起こります。鋸歯状のF波が特徴です。

SVT — Supraventricular Tachycardia(上室性頻拍)

正常:洞結節が心拍を決める。
異常:心房やAV node周辺のリエントリーなどで、上室から非常に速い規則的な刺激が心室へ伝わります。QRSは狭いことが多いです。

房室ブロック

First-Degree AV Block(1度房室ブロック)

正常:心房の刺激が適切な時間で心室へ伝わる。
異常:刺激は毎回伝わりますが、伝導が遅くなりPR間隔が延長します。

Mobitz I — Second-Degree AV Block, Mobitz Type I(2度房室ブロック・Mobitz I)

正常:PR間隔はほぼ一定。
異常:PR間隔が徐々に長くなった後に、QRSが1回脱落します。

Mobitz II — Second-Degree AV Block, Mobitz Type II(2度房室ブロック・Mobitz II)

正常:心房刺激は安定して心室へ伝わる。
異常:PR間隔は一定なのに突然QRSが脱落します。His-Purkinje系の障害が多く、より重い伝導障害へ進むことがあります。

Complete AV Block / Third-Degree AV Block(完全房室ブロック)

正常:P波の後にQRSが続く。
異常:心房から心室へ刺激が伝わらず、P波とQRSが互いに無関係に出ます。

心室性不整脈

PVC — Premature Ventricular Contraction(心室性期外収縮)

正常:洞結節→His-Purkinje系を通って心室が興奮。
異常:心室の一部が予定より早く興奮します。正常伝導路を通らないため、幅広いQRSになりやすいです。

VT — Ventricular Tachycardia(心室頻拍)

正常:心室は上からの刺激で規則的に収縮。
異常:心室内から速い刺激が連続して発生し、wide QRSの頻拍になります。

VF — Ventricular Fibrillation(心室細動)

正常:心室全体がまとまって収縮。
異常:心室の電気活動が無秩序になり、有効な心室収縮ができません。明瞭なQRSは認めません。

脚ブロック

RBBB — Right Bundle Branch Block(右脚ブロック)

正常:右脚・左脚から両心室へほぼ同時に伝導。
異常:右脚の伝導が遅れ、右心室が左心室より遅れて興奮するためQRSが広くなります。

LBBB — Left Bundle Branch Block(左脚ブロック)

正常:両脚から両心室へほぼ同時に伝導。
異常:左脚の伝導が遅れ、左心室が右心室より遅れて興奮するためQRSが広くなります。

STEMI
誘導の目安:V1–V2は中隔(septal)、V3–V4は前壁(anterior)を主に反映します。本ツールでは初学者向けにV1–V4を「前壁〜中隔」とまとめて扱います。

Inferior STEMI(下壁ST上昇型心筋梗塞)

正常:II・III・aVFにST上昇なし。
異常:下壁側に急性心筋傷害が起こり、II・III・aVFでST上昇がみられます。

Anterior / Septal STEMI(前壁〜中隔ST上昇型心筋梗塞)

正常:V1〜V4にST上昇なし。
異常:前壁〜中隔に急性心筋傷害が起こり、V1〜V4でST上昇がみられます。

Lateral STEMI(側壁ST上昇型心筋梗塞)

正常:I・aVL・V5・V6にST上昇なし。
異常:左側壁に急性心筋傷害が起こり、I・aVL・V5・V6でST上昇がみられます。

根拠・参考文献
循環器の基礎・疾患クイズ(新規)

基礎と病態生理を、説明を思い出しながら練習します。正答後は理由も確認してください。

「新しい問題」を押してください。
問題ごとに解説を表示します。
③ 胸部誘導の位置クイズ
下の位置説明に合う V1〜V6 を選んでください。
正解 0 / 0
ヒント:
  • V1 = 右胸骨縁 第4肋間
  • V2 = 左胸骨縁 第4肋間
  • V3 = V2とV4の中間
  • V4 = 左鎖骨中線 第5肋間
  • V5 = 左前腋窩線でV4と同じ高さ
  • V6 = 左中腋窩線でV4と同じ高さ
④ RA / LA / LL / RL 配置練習
ドラッグではなく、名前を選んでから位置スロットを押す簡易形式です。
1. 下から電極名を選ぶ
2. 置きたい位置を押す
覚え方:
  • RA = 右腕相当
  • LA = 左腕相当
  • RL = 右脚相当(基準・アース)
  • LL = 左脚相当
この練習の目的:
I / II / III / aVR / aVL / aVF という誘導名は、まず RA・LA・LL・RL の配置から作られる、という感覚を持つことです。
⑤ ECG風波形で診断する
本物のECGそのものではなく、学習用に特徴を強調した模式波形です。STEMI / AF / PVC / VT / RBBB / LBBB / Mobitz I — Second-Degree AV Block, Mobitz Type I(2度房室ブロック・Mobitz I) / Mobitz II — Second-Degree AV Block, Mobitz Type II(2度房室ブロック・Mobitz II) / Complete AV Block / Third-Degree AV Block(完全房室ブロック) / SVT / Atrial flutter / VF を練習できます。
根拠・参考文献
波形モードの根拠・参考文献
※本ツールの波形は実ECG画像の転載ではなく、各特徴を学ぶために単純化した模式波形です。
治療・救急対応を学ぶ際の参考
⑥ 基本練習
正解 0 / 0

⑦ まず押さえるセット
II・III・aVF → 下壁
V1〜V4 → 前壁〜中隔
I・aVL・V5・V6 → 側壁
RA・LA・LL・RL → 四肢電極
aVR 右肩 / aVL 左肩 / aVF 足元
根拠・参考文献
根拠・参考文献

図の出典とライセンス

このページの心臓の断面図(血液の流れ、電気の流れ、冠動脈、心筋症、弁膜症の図)は、Wikimedia Commons の 「Heart diasystole.svg」 (原画:Wapcaplet、Reytan/ベクター化:Sjef)を改変したものです。原図は CC BY-SA 3.0 (GFDL 1.2 以降とのデュアルライセンス)で公開されています。

改変内容:配色の変更、元の矢印の削除、ラベル・刺激伝導系・冠動脈・病変表示・アニメーションの追加、部屋の形の変更(心筋症・弁膜症)。

改変したこれらの図は、原図と同じ CC BY-SA 3.0 で提供します。

ECG タブの胸部誘導の図は、Mikael Häggström「Precordial leads in ECG.svg」(CC0 1.0、パブリックドメイン)を改変したものです。改変内容:肌の写真を単色の肌色に置き換え、肋骨を白く調整、元の英語ラベル・電極表示を削除し、日本語ラベル・電極(IEC/AHA の色切り替えに対応)を追加。